巨額政府資金が向かう先ー後編
最強の米国ポートフォリオを構築する
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巨額政府資金の向かう先(後半)
投資の実践
ジェネシス・ミッション:米国AI戦略の全貌と投資ランドスケープ
1.パラダイムシフトとしての「ジェネシス・ミッション」
1.1 「AI版マンハッタン計画」の真意と歴史的文脈
2025年11月24日、トランプ政権下で発令された大統領令による「ジェネシス・ミッション(Genesis Mission)」の始動は、単なる科学技術政策の更新ではなく、米国の国家産業戦略における第二次世界大戦以降で最も重要な転換点を示唆している1。公式文書において「マンハッタン計画」という比喩が用いられたことは、このイニシアチブが平時の研究開発支援ではなく、国家の存亡と覇権をかけた「戦時体制」に近い緊急性とリソース動員を伴うものであることを意味する。
かつてのマンハッタン計画が「原子物理学」を軍事・エネルギーの実装へと昇華させたように、ジェネシス・ミッションは「人工知能(AI)」をデジタルの領域から物理的現実(Physical Reality)へと解放し、科学的発見のプロセスそのものを産業化しようとしている。これは、チャットボットや画像生成といった消費者向けAIの流行を超え、AIを「科学者(Reasoning Agent)」として再定義する試みである。
本戦略の中核にあるのは、エネルギー省(DOE)が主導する「米国科学・安全保障プラットフォーム(American Science and Security Platform)」の構築である3。これは、米国の17の国立研究所が保有する世界最大級の科学データセット、エクサスケール・スーパーコンピュータ、そして最先端のAIモデルを物理的に統合し、仮説立案から実験、検証、そして再学習までのサイクルを人間の介入なしに自律的に回す「クローズド・ループ(Closed-Loop)」システムを目指している。
投資家の観点から見れば、これは「AIインフラへの投資(データセンターやGPU)」から「AIによる実産業変革への投資(創薬、新素材、エネルギー)」への資金シフトを強制するシグナルである。特に、ホワイトハウスが指定した6つの優先分野(先進製造、バイオテクノロジー、重要材料、原子力エネルギー、量子情報科学、半導体)は、今後10年間、政府資金の流入、規制緩和、そして「国策銘柄」としてのプレミアムを享受するセクターとなることが予想される3。
1.2 「戦時ペース」のタイムラインと投資トリガー
このミッションの特異性は、その圧倒的なスピード感にある。通常、数年を要する連邦政府のプロジェクト立案に対し、大統領令は「270日以内」に初期運用能力の実証を求めている。この極めて野心的なスケジュールは、政府が既存の技術を持つ民間企業に対して、開発・統合の契約を急速に発注することを示唆しており、市場にとって強力なカタリストとなる1。
| 期間 | 期日(目安) | 達成目標 | 投資家への影響と注目点 |
|---|---|---|---|
| 60日以内 | 2026年1月下旬 | 国家課題リストの確定 少なくとも20の優先科学技術課題を特定。 | ここで特定される具体的な課題(例:特定の希少がん治療薬、極超音速ミサイル用耐熱素材)に関連するニッチな技術企業が、最初の物色対象となる。 |
| 90日以内 | 2026年2月下旬 | 計算リソースの特定 利用可能な全連邦・民間の計算資源をリスト化。 | 国立研究所のオンプレミス資源に加え、民間のクラウド事業者(AWS, Azure, Google Cloud)や、それらを支えるデータセンターインフラ、電力供給企業への需要が具体化する。 |
| 120日以内 | 2026年3月下旬 | データ資産計画 連邦データセットの統合計画とセキュリティ基準の策定。 | 独自の科学データを持つ企業(バイオ、材料)が、そのデータを「国家資産」としてライセンス提供する機会が生まれる。同時に、高度なサイバーセキュリティ企業への需要が高まる。 |
| 240日以内 | 2026年7月下旬 | ロボットラボの審査 AI主導実験を行うための自動化ラボの能力審査。 | 最も重要な物理的投資フェーズ。 AIの指示で動く実験ロボット、自動化された分析機器、IoTセンサーを提供する「先進製造」企業の株価にとって直接的なカタリストとなる。 |
| 270日以内 | 2026年8月下旬 | 初期運用能力(IOC)の実証 少なくとも一つの課題でプラットフォームが稼働。 | プロジェクトの成否を占う最大のイベント。成功すれば、関連銘柄への長期的な機関投資家資金の流入が決定づけられる。 |
このタイムラインは、政府が単に補助金を出すだけでなく、巨大な「顧客」として技術を調達し、統合するプロセスであることを示している。したがって、すでにDOEや国立研究所と契約関係(OTA: Other Transaction Authorityなど)にある企業や、セキュリティクリアランスを持つ企業が圧倒的に有利な立場にある5。
2. アーキテクチャ分析:米国科学・安全保障プラットフォームの全貌
ジェネシス・ミッションが目指す「米国科学・安全保障プラットフォーム」は、従来の「計算科学」とは一線を画す、物理世界とデジタル世界を融合させたサイバネティックなシステムである。
2.1 クローズド・ループ型発見システム (Closed-Loop Discovery System)
従来の科学的発見プロセスは、科学者が論文を読み、仮説を立て、手作業で実験を行い、結果を解析するという、人間中心のボトルネックが存在した。ジェネシス・ミッションはこのプロセスを以下の4段階のループとして自動化することを目指している。
- 仮説生成 (Hypothesis Generation):
DOEが保有する数十年分の実験データと科学論文を学習した「科学基盤モデル(Scientific Foundation Model)」が、数百万の候補物質や分子構造の中から有望な候補を生成する。ここでは、ChatGPTのような言語モデルだけでなく、物理法則を理解したAI(Physics-informed AI)が活用される。 - 実験設計 (Experiment Design):
AIエージェントが、検証に必要な実験プロトコルを設計する。これには、試薬の配合、温度条件、測定タイミングなどが含まれ、シミュレーションと実実験のコストバランスを最適化する。 - 自律実験 (Autonomous Experimentation):
指令を受けた「ロボットラボ(Robotic Lab)」が物理的な実験を遂行する。ここでは、人間がピペットを持つのではなく、液体ハンドリングロボットや自動搬送装置が稼働する。テラダイン(Teradyne)やロックウェル・オートメーション(Rockwell Automation)などの技術がここで不可欠となる。 - データ同化と再学習 (Data Assimilation & Retraining):
実験結果はリアルタイムでデジタル化され、AIモデルにフィードバックされる。AIは結果から即座に学習し、次の仮説を修正する。このサイクルを24時間365日回すことで、人間なら10年かかる発見を数ヶ月に短縮する。
2.2 参加プレイヤーの階層構造
このプラットフォームを構築するために、DOEは以下の3層のプレイヤーを動員している。
- AI&コンピューティング・パートナー(頭脳):
大統領令およびDOEの発表では、NVIDIA, Google, Microsoft, AWS, OpenAI, Anthropic, IBM, AMD といった巨大テック企業が公式な協力者としてリストアップされている6。彼らは計算リソースと基盤モデルのアーキテクチャを提供する。 - ドメイン・エキスパート(専門知識):
各優先分野(バイオ、原子力、材料など)において、専門的なデータや技術を持つ企業。Recursion Pharmaceuticals(バイオ)やOklo(原子力)などがこれに該当する。彼らは汎用AIを特定の科学問題に適用するための「ファインチューニング」を担う。 - インフラ・サプライヤー(手足):
ロボット、実験機器、特殊チップ、原子力燃料などを提供する企業。Thermo Fisher ScientificやCentrus Energyなどが該当する。彼らはプラットフォームが物理的に機能するための基盤を提供する。
3. 分野別詳細分析:参加企業と「ツルハシ・シャベル」銘柄
ここからは、大統領令で指定された6つの優先分野について、その戦略的重要性と、具体的な投資機会(上場企業)を詳細に分析する。各セクションでは、「主力銘柄(Frontline Players)」と、それらを支える「サプライチェーン銘柄(Pick & Shovel)」を明確に区別して記述する。
3.1 先進製造 (Advanced Manufacturing) & ロボティクス
戦略的背景:
ジェネシス・ミッションにおける「先進製造」は、単なる工場の効率化ではない。それは「実験室の工場化」と「サプライチェーンの自律化」を意味する。科学実験を人間からロボットへと移行させるためには、極めて柔軟で精度の高い自動化技術が必要となる。また、中国に依存しない国内生産体制を構築するための「リショアリング(国内回帰)」の技術基盤でもある。
【主力銘柄:産業用オートメーションと協働ロボット】
- Rockwell Automation (ROK)
- 企業概要: 米国最大の産業オートメーション企業。製造現場の制御システム(PLC)、産業用IoTプラットフォーム、ソフトウェアを統合的に提供する。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: DOEの「ロボットラボ」や「自動化生産施設」の神経系を構築する。異なるメーカーの装置やロボットを一元管理し、AIからの指令を物理的な動作に変換する制御レイヤー(OT: Operational Technology)において、米国内で最も信頼性の高いパートナーである5。
- 投資の論点: AIと物理マシンの接続点としての必須性。政府調達における「米国製」要件への適合。
- Teradyne (TER)
- 企業概要: 自動テスト装置の大手であり、傘下の「Universal Robots(UR)」は協働ロボット(コボット)の世界シェアトップである。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: 従来の産業用ロボットは安全柵が必要だが、URのコボットは人間と同じ空間(実験室)で安全に稼働できる。ピペット操作、検体の搬送、機器へのサンプルのセットなど、研究者の「手」を代替するハードウェアとして最適解の一つである5。
- 投資の論点: ラボオートメーション市場の拡大に伴うコボット需要の急増。半導体テスト事業におけるAIチップ需要の恩恵とのダブルメリット。
【サプライチェーン/技術依存銘柄】
- Siemens (SIEGY)
- 概要: 欧州企業だが、米国のインフラにも深く浸透している。デジタルツイン技術において圧倒的な強みを持ち、工場やラボを建設する前に仮想空間でシミュレーションする技術を提供する。ジェネシス・ミッションの「270日」という短期間での立ち上げには、物理建設前のデジタル検証が不可欠である7。
- PTC Inc. (PTC) / Ansys (ANSS)
- 概要: エンジニアリング・シミュレーションソフトウェア。ロボットアームの動きや、製造プロセスの物理挙動をシミュレーションし、AIによる最適化を支援する「物理エンジンの提供者」。
3.2 バイオテクノロジー&医薬品 (Biotechnology & Pharmaceuticals)
戦略的背景:
この分野でのAI活用は、すでに「AlphaFold」によるタンパク質構造予測などで実績があるが、ジェネシス・ミッションはさらに踏み込み、「機能の予測」と「設計」を目指す。国家安全保障の観点からは、次なるパンデミックへの即応体制や、生物兵器への対抗策(Biosecurity)が重要視される。
【主力銘柄:AI創薬・プラットフォーム】
- Recursion Pharmaceuticals (RXRX)
- 企業概要: 「生物学のデコード」を掲げるテック・バイオ企業。独自の研究室で毎週数百万回の実験を行い、その画像データをAIに学習させている。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: 本ミッションの「モデルケース」と目される。すでにNVIDIAと提携し、AI創薬用の基盤モデル「BioNeMo」の開発に貢献している。DOEが目指す「実験データとAIのループ」をすでに商用規模で実現しており、そのノウハウとデータセット(20ペタバイト以上)は国家戦略にとって極めて価値が高い5。
- 投資の論点: 「AI創薬」の代表銘柄としてのプレミアム。NVIDIAおよび政府との強力なパイプライン。
- Ginkgo Bioworks (DNA)
- 企業概要: 合成生物学のプラットフォーマー。「細胞プログラミング」を受託する。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: バイオセキュリティ部門が強力で、空港での病原体監視プログラムなどを政府と共同で行っている。ジェネシス・ミッションにおける「生物学的脅威の早期発見と対応」において、同社のデータ基盤と自動化ラボ(Foundry)が活用される可能性が高い5。
- 投資の論点: バイオセキュリティ関連の政府契約の拡大。
- Schrödinger (SDGR)
- 企業概要: 物理学ベースの分子シミュレーション・ソフトウェアのリーダー。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: AIは相関関係を見つけるのは得意だが、物理的な因果関係の保証には弱い。Schrödingerの「第一原理計算」に基づくシミュレーションは、AIが生成した候補物質が現実世界で安定して存在しうるかを検証する「デジタル・バリデーション」の役割を果たす5。
【サプライチェーン/技術依存銘柄】
- Thermo Fisher Scientific (TMO)
- 概要: 世界最大の科学機器メーカー。
- 重要性: 「ロボットラボ」の中身を提供する企業。質量分析計、電子顕微鏡、シーケンサー、そしてそれらを繋ぐラボオートメーションシステムにおいて圧倒的なシェアを持つ。RecursionやGinkgoも同社の機器に依存している。AIがどれだけ進化しても、最終的な物理実験を行うのはThermo Fisherの機械である5。
- Twist Bioscience (TWST)
- 概要: シリコンベースのDNA合成技術を持つ。
- 重要性: AIが新薬や新素材のDNA配列を設計した後、それを物理的なDNAとして「印刷(合成)」する必要がある。Twistはこの分野のボトルネックを解消する唯一無二の技術を持っており、AIによる設計量が増えれば増えるほど、同社の合成DNAへの需要は高まる5。
- Danaher (DHR)
- 概要: ライフサイエンス・診断機器の大手コングロマリット。
- 重要性: 傘下のBeckman CoulterやMolecular Devicesを通じ、ラボ自動化ソリューションを提供。特にハイスループット・スクリーニング(大量の検体を高速で検査する技術)に強みを持ち、ジェネシス・ミッションの規模感に適応する9。
3.3 核分裂・核融合エネルギー & 電力網の近代化
戦略的背景:
AIデータセンターの消費電力は爆発的に増加しており、2028年までには米国の電力消費の10%以上を占めると予測されている。再生可能エネルギーだけでは安定供給(ベースロード)が困難であるため、米国政府は「AIのための原子力」へと大きく舵を切っている。特に、データセンターに隣接して設置できる小型モジュラー炉(SMR)と、その燃料供給網の確保が最優先課題である5。
【主力銘柄:次世代原子炉・運営】
- Oklo Inc. (OKLO)
- 企業概要: 高速核分裂マイクロリアクター「Aurora」を開発。OpenAIのサム・アルトマンが会長を務める。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: データセンターの敷地内に設置可能な極小サイズの原子炉を開発しており、AIインフラへの直接給電を目指している。DOEから使用済み核燃料の再利用に関する支援を受けており、アイダホ国立研究所での初号機建設が進行中である。ジェネシス・ミッションの「エネルギー自立」の象徴的企業5。
- 投資の論点: データセンター市場という巨大な需要先。NRCの認可プロセスというリスク要因。
- NuScale Power (SMR)
- 企業概要: 軽水炉型のSMR開発企業。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: 米国で唯一、標準設計承認(SDA)をNRCから取得済み(50MWeモデル)。技術的な成熟度と規制当局からの信頼性が高く、政府主導のプロジェクトで最も採用されやすい「安全牌」である。DOEの支援を長年受けてきた実績がある5。
- Constellation Energy (CEG)
- 企業概要: 米国最大の原子力発電事業者。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: 既存の原子力発電所からの電力を、Microsoftなどのハイパースケーラーに直接販売する契約(スリーマイル島原発再稼働など)を締結している。新規SMRが稼働するまでの「つなぎ」以上の、現実的な電力供給の主役である14。
【サプライチェーン/技術依存銘柄(ツルハシ・シャベル)】
- Centrus Energy (LEU)
- 概要: ウラン濃縮および燃料供給。
- 重要性: 極めて高い戦略的価値を持つ。 OkloやTerraPower(ビル・ゲイツ支援、非上場)などの次世代炉の多くは、高純度低濃縮ウラン(HALEU)という特殊な燃料を必要とする。現在、HALEUの商業供給能力を持つのは世界でロシアと中国が主であり、西側諸国ではCentrus Energyが唯一、米国内での生産ライセンスと実証プラントを持っている。米国政府にとって、同社の成功はSMR戦略の前提条件であり、失敗は許されない5。
- BWX Technologies (BWXT)
- 概要: 原子力部品・燃料製造。米海軍の原子力艦艇向け原子炉の独占サプライヤー。
- 重要性: SMRの心臓部である圧力容器や熱交換器を製造できる、北米で数少ない認証工場を持つ。GE日立のSMR「BWRX-300」の圧力容器製造契約を受注するなど、SMR製造の「物理的な工場」としての地位を確立している。また、HALEU燃料の加工技術も保有している5。
- Fluor Corporation (FLR) / Jacobs Solutions (J) / AECOM
- 概要: 大手エンジニアリング・建設(EPC)企業。
- 重要性: SMR自体は工場で作られても、それを設置するサイトの建設、耐震設計、セキュリティ設備の構築には、原子力特有のノウハウを持つEPC企業が必要不可欠である。
- Fluor: NuScaleの元親会社であり大株主。NuScaleの建設プロジェクトにおいて独占的な地位にある13。
- Jacobs: 英国のSMRプログラムや米国の国立研究所の運営管理に深く関与しており、コンサルティングとエンジニアリングの両面で支援する21。
- AECOM: 原子力施設の廃炉や環境修復に強みを持つが、マイクロリアクター(NANO Nuclearなど)の展開支援にも参入している23。
3.4 量子情報科学 (Quantum Information Science)
戦略的背景:
ジェネシス・ミッションでは、量子コンピュータを単独で使用するのではなく、スーパーコンピュータやAIと連携させる「ハイブリッド・コンピューティング」を志向している。量子コンピュータは、新素材の分子シミュレーションや、複雑な送電網の最適化など、古典的なAIが苦手とする特定領域の計算を担当する「アクセラレータ(加速装置)」として位置付けられる5。
【主力銘柄:量子ハードウェア】
- IonQ (IONQ)
- 企業概要: 「トラップイオン方式」の量子コンピュータ開発におけるリーダー。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: トラップイオン方式は、量子ビット間の結合性が高く、誤り訂正において有利な特性を持つ。すでにDOEのオークリッジ国立研究所と提携し、米国の電力網最適化に向けたアルゴリズム開発を行っている。ジェネシス・プラットフォームにおいて、最適化問題を解くための主要なハードウェアパートナーとなる可能性が高い5。
- 投資の論点: Amazon Braketなどのクラウド経由でのアクセス性、特許ポートフォリオの強さ。
- Rigetti Computing (RGTI)
- 企業概要: 「超伝導方式」の量子コンピュータ開発。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: 米国内に独自のチップ製造ファブ(Fab-1)を保有している点が最大の強み。量子チップの設計から製造までを国内で完結できる能力は、国家安全保障上の理由からDOEにとって魅力的である。すでにDOEへのQPU納入実績がある5。
- D-Wave Quantum (QBTS)
- 企業概要: 「量子アニーリング」方式に特化。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: 汎用計算(ゲート型)とは異なり、アニーリングは「組合せ最適化問題」に特化している。物流、創薬スクリーニング、人事配置など、即座に実用的な解が必要な分野において、最も早期に成果を出せる技術として採用される可能性がある5。
【サプライチェーン/技術依存銘柄】
- Keysight Technologies (KEYS)(分析に基づく追加)
- 重要性: 量子コンピュータの制御には、極めて精密なマイクロ波信号の生成と測定が必要である。Keysightはこの分野の電子計測機器のリーダーであり、多くの量子ラボが同社の機器に依存している。
- Coherent (COHR) / IPG Photonics (IPGP)
- 重要性: IonQのようなトラップイオン方式や、冷却原子方式の量子コンピュータには、原子を捕捉・操作するための高出力かつ高安定なレーザー光源が不可欠である。これら産業用レーザー大手は、量子コンピューティング向けの高精度レーザー市場における重要なサプライヤーである27。
- (注記)冷凍機サプライチェーン: 超伝導方式(Rigetti, IBM, Google)に必要な「希釈冷凍機」の最大手Bluefors(フィンランド)は未上場である。関連銘柄としては、極低温環境における真空技術を提供する企業(例:MKS Instruments等)が間接的な恩恵を受ける。
3.5 半導体とマイクロエレクトロニクス
戦略的背景:
AIモデルの巨大化に伴い、計算能力への需要は指数関数的に増大している。ジェネシス・ミッションは、最先端のAIチップ(GPU)の確保だけでなく、防衛・インフラ向けの「高信頼性チップ(Trusted Chips)」の国内製造能力の確保を重視している。政府はCHIPS法と連携し、株式取得などの踏み込んだ手段で関与を深めている5。
【主力銘柄:チップ製造・設計】
- NVIDIA (NVDA)
- ジェネシス・ミッションにおける役割: 公式パートナーの筆頭。DOEのスパコン(例:Argonne国立研究所のシステム)にはNVIDIAのGPUが大量に導入されている。AIプラットフォームのソフトウェア基盤(CUDA)も含め、代替不可能な存在6。
- Intel (INTC)
- ジェネシス・ミッションにおける役割: 「政府の救済対象」かつ「戦略的資産」。最先端ロジック半導体を米国内で製造できる唯一の企業。国防総省向けの「Secure Enclave(安全な領域)」プログラムを受注しており、機密性の高いAIチップや軍事用チップの製造拠点として、ジェネシス・ミッションのハードウェア基盤を支える5。
- Wolfspeed (WOLF)
- 企業概要: 次世代パワー半導体(SiC: 炭化ケイ素)のリーダー。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: AIデータセンターの電力効率化や、EV、送電網のインバータにおいて、SiCデバイスはシリコンよりも高効率である。エネルギー省の「エネルギー効率化」目標に直結する技術を持つ。財務的課題があるため、政府支援の対象となりやすい5。
- SkyWater Technology (SKYT)
- 企業概要: 米国資本の専業ファウンドリ。国防総省認定の「Trusted Foundry」。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: 最先端の微細化(nm競争)ではなく、放射線耐性チップ(宇宙・核施設用)や、バイオチップ、超伝導チップなどの特殊プロセスの製造を担う。国立研究所の研究開発用チップの試作・製造パートナーとして最適5。
【サプライチェーン/技術依存銘柄】
- Synopsys (SNPS) / Cadence Design Systems (CDNS)
- 重要性: 半導体設計自動化(EDA)ツールの複占企業。NVIDIAもIntelも、チップを設計するために必ずこれらのソフトウェアを使用する。さらに、チップ製造プロセスの「デジタルツイン」化においても中心的な役割を果たしており、DOEの目指すシミュレーション主導の設計に合致する29。
- Entegris (ENTG)
- 重要性: 半導体材料と汚染管理のリーダー。CHIPS法による助成金対象企業。最先端チップの製造には、ナノレベルの汚染管理が不可欠であり、同社の特殊フィルターや搬送容器(FOUP)は必須のインフラである。米国内でのサプライチェーン強靭化の要と位置付けられている33。
3.6 重要材料 (Critical Materials)
戦略的背景:
AIロボットのモーター、半導体、次世代バッテリーなど、ジェネシス・ミッションの物理的実装には特定の鉱物が不可欠である。現在、これらの多くを中国が支配している現状に対し、DOEは国内および同盟国内での供給網構築を急いでいる2。
【主力銘柄:鉱山開発・素材】
- MP Materials (MP)
- 企業概要: 西半球唯一の主要なレアアース鉱山(Mountain Pass)を所有・運営。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: ロボットのアクチュエーター(関節)やEVモーターに使われるネオジム磁石の原料を供給。国防総省との契約もあり、中国依存脱却のシンボル的存在2。
- Perpetua Resources (PPTA)
- 企業概要: アイダホ州でアンチモン・金鉱山プロジェクト(Stibnite)を推進。
- ジェネシス・ミッションにおける役割: アンチモンは、弾薬の雷管や難燃剤、そして大容量蓄電池(液体金属電池)の電解質として戦略的重要性が高い。現在、世界の供給の大半を中国・ロシア・タジキスタンが占めており、国内供給源の確保が急務となっている。国防生産法(DPA)に基づく支援を受けている5。
4. 投資リスクと総合的な結論
ジェネシス・ミッションは巨大な機会を提供する一方で、無視できないリスクも孕んでいる。
4.1 「利用可能な予算の範囲内で (Subject to available appropriations)」のリスク
大統領令にはこの文言が繰り返し登場する11。これは、議会が新たな巨額予算(「新しいお金」)を承認しない限り、各省庁は既存の予算をやり繰りしてプロジェクトを進めなければならないことを意味する。
- 投資への示唆: まだ収益化できていないスタートアップよりも、すでにエネルギー省や国防総省と強固な契約を持ち、既存の予算枠内で収益を上げている企業(BWXT, Centrus, Leidos, Jacobs等)の方が、初期段階のリスクは低い。
4.2 技術的・時間的リスク
270日というスケジュールは、ソフトウェアの実装には十分かもしれないが、新しい原子炉や鉱山の開発には短すぎる。
- 投資への示唆: ニュースフローによる短期的な期待上げと、実質的な業績寄与(数年後)とのタイムラグに注意が必要である。特にSMRや量子コンピュータは、実用化の遅延が株価の急落を招く可能性がある。
4.3 結論:投資ポートフォリオの構築戦略
ジェネシス・ミッションは、米国のテクノロジー投資のテーマを「バーチャル(広告、SNS)」から「リアル(エネルギー、製造、防衛)」へとシフトさせる強力なモーメンタムである。
投資家は以下の3つのバスケットでポートフォリオを検討すべきである。
- 「王道」インフラ銘柄:
- NVIDIA (NVDA), Microsoft (MSFT), Constellation Energy (CEG), Thermo Fisher (TMO)
- これらはミッションの成否に関わらず、AIと科学の融合というメガトレンドの恩恵を受ける。
- 「戦略的チョークポイント」銘柄:
- Centrus Energy (LEU), Entegris (ENTG), MP Materials (MP), Twist Bioscience (TWST)
- 代替が効かない技術や資源を持っており、米国の自立戦略において必須の構成要素である。
- 「ムーンショット」銘柄:
- IonQ (IONQ), Oklo (OKLO), Recursion (RXRX)
- リスクは高いが、政府の支援を受けて技術的ブレイクスルーを達成した場合、テンバガー(10倍株)級のリターンをもたらす可能性がある。
この「AI版マンハッタン計画」は、単なる科学プロジェクトではなく、21世紀の産業覇権をかけた国家総動員体制の現れである。関連企業への資金流入は、短期的なブームに終わらず、長期的な国策トレンドとして継続する可能性が高い。
引用文献
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- White House Issues “Genesis Mission” Executive Order on AI | Maynard Nexsen – JDSupra, 12月 5, 2025にアクセス、 https://www.jdsupra.com/legalnews/white-house-issues-genesis-mission-3979735/
- White House Issues “Genesis Mission” Executive Order on AI – Maynard Nexsen, 12月 5, 2025にアクセス、 https://www.maynardnexsen.com/publication-white-house-issues-genesis-mission-executive-order-on-ai
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- Miss These Genesis Mission Stocks, and You’ll Regret It for a …, 12月 5, 2025にアクセス、 https://investorplace.com/hypergrowthinvesting/2025/12/miss-these-genesis-mission-stocks-and-youll-regret-it-for-a-decade/
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- Ginkgo Bioworks Awarded Project Agreement through BARDA’s BioMaP-Consortium, 12月 5, 2025にアクセス、 https://www.prnewswire.com/news-releases/ginkgo-bioworks-awarded-project-agreement-through-bardas-biomap-consortium-302600814.html
- S. Laboratory Automation Market | Industry Report, 2030, 12月 5, 2025にアクセス、 https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/us-laboratory-automation-market-report
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- CHIPS for America: Successes, Misconceptions and What Next? – EE Times, 12月 5, 2025にアクセス、 https://www.eetimes.com/chips-for-america-successes-misconceptions-and-what-next/
- Nvidia at SC25: Apollo Models, New Supers for RIKEN, and CPO Buyers – HPCwire, 12月 5, 2025にアクセス、 https://www.hpcwire.com/2025/11/17/nvidia-at-sc25-apollo-models-new-supers-for-riken-and-cpo-buyers/
- Neuromorphic Chips: Brain-Inspired AI Is Coming Faster Than You Think | InvestorPlace, 12月 5, 2025にアクセス、 https://investorplace.com/hypergrowthinvesting/2025/09/beyond-gpus-why-neuromorphic-chips-could-power-the-future-of-ai/
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- Launching the Genesis Mission – The White House, 12月 5, 2025にアクセス、 https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/11/launching-the-genesis-mission/
後編ここまで
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