日本から世界最強クラスの暗号通信技術が誕生するかもしれません
政府が推進する新たな技術
サイバー攻撃による個人情報漏洩のニュースが後を絶ちません。
しかも、将来の量子コンピュータの発展によって、現在使われている暗号技術の一部が簡単に解読されてしまう可能性も指摘されています。
そこで、Googleやマイクロソフトなどの大手IT企業も、次世代のセキュリティ技術の開発を進めています。
その有力な技術のひとつが「量子暗号通信」です。
量子暗号通信は、量子力学の性質を利用して暗号鍵を安全に共有する技術です。
通常の通信では、第三者に暗号鍵を盗み見られても気づかない可能性がありますが、量子暗号通信では、盗聴によって生じる量子状態の変化を利用して、その痕跡を検知できるのです。
つまり、暗号鍵を盗もうとすると、その行為が発覚する可能性があるというわけです。
なんだかすごい技術ですよね。
日本政府が国家戦略として推進
日本政府はこの技術を単なる研究テーマではなく、日本の経済安全保障、次世代通信インフラ、国際競争力に関わる国家戦略のひとつとして位置付けています。
サナエノミクスに掲げられている戦略17分野のうちのひとつに「量子分野」があり、量子コンピューティングと共に量子通信・ネットワークが挙げられています。
そして2026年には、東京・名古屋・大阪を結ぶ約600kmの量子暗号通信ネットワークの構築が開始されました。
政府はこのネットワークを使って技術の検証を進め、2030年頃の社会実装を目指しています。
さらに、国内の情報セキュリティを強化するだけではなく、海外に輸出できる産業として育てようとしているのです。
実は東京では、2010年から量子暗号通信の実証が続いています。
中心となっているのは、総務省所管の情報通信研究機構(NICT)です。
日本を代表する3社がネットワーク構築に参加
そして、今回の東名阪ネットワーク構築の中心となる民間企業は以下の3社です。
- NTTドコモビジネス
- 東芝
- NEC
このうち東芝とNECは、NICTと共同で、すでに重要な技術実証に成功しています。
2025年7月28日、東芝、NEC、NICTは、NTTが提唱する次世代光通信構想「IOWN」に対応した実証環境で、通常の大容量データ通信と量子鍵配送を共存させることに成功したと発表しました。
これがなぜ重要なのかというと、量子暗号通信を普及させるために、専用の通信網をすべて新しく整備する必要がなくなる可能性があるからです。
既存の光通信網を利用できれば、導入コストを抑えられる可能性があります。
東芝の量子暗号通信技術は世界トップクラス
実は東芝の量子暗号通信技術は、世界でも高い評価を受けています。
その理由は、主に次の4つです。
- 量子暗号通信の課題だった通信距離の長距離化
- 暗号鍵を高速に生成する技術
- 既存の光通信網と共存できる技術
- 海外での商用サービスへの導入実績
特に通信距離については、2021年に600kmを超える光ファイバーでの量子鍵配送を実証しています。
また、暗号鍵を生成する速度でも世界最高水準の研究成果を発表してきました。
単に研究室の中で技術を開発しているだけではなく、イギリスなど海外の実際の通信ネットワークでも活用されているという点が注目されます。
もちろん、世界各国でも研究開発が進んでいるため、東芝がすべての技術で世界一というわけではありません。
それでも、日本企業が世界の量子暗号通信技術の発展に大きく貢献していることは確かです。
東芝は2023年12月に上場廃止となったため、現在は証券取引所で株を購入することはできませんが、久しぶりに世界トップを狙える日本の技術が出てきているのは、とても嬉しいニュースですね。
